南東部アフリカにおける初等教育の状況分析

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2021年10月22日21:54:11 评论

目次
序章 問題意識と方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
1 . 問題意識
( 1 ) グローバル化の進展と国際学力調査 5
( 2 ) 途上国援助における教育の質の指標 7
2 . 先行研究の検討 1 0
3 . 研究方法 1 3
4 . 本論文の構成 1 3
第1 章 国際学力調査とSACMEQ・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
1 . 国際学力調査の種類 1 5
2 . S A C M E Q について
( 1 ) 概要 1 9
( 2 ) 参加国 2 1
( 3 ) 参加国の教育状況 2 8
( 4 ) 問題構成 3 1
( 5 ) 問題サンプル 3 4
3 . 分析に用いる指標について
( 1 ) S E S について 3 7
( 2 ) 重み付けについて 4 0
第2 章 フレームを用いての分析・・・・・・・・・・・・・・・・・47
1 . 一人当たりG N P ( G N I )フレーム
( 1 ) 世界の一人当たりG N P ( G N I )の分布と理論 4 7
( 2 ) 一人当たりG N P ( G N I )と成績 5 6
( 3 ) 質問項目への適用 5 8
3
2 . 成績順フレーム
( 1 ) 成績の分布と理論 6 7
( 2 ) 一人あたりG N I フレームと成績順フレームの併用 7 1
3 . フレーム分析の補足
( 1 ) 違う時期との比較 7 2
( 2 ) その他のフレームの可能性 7 4
4 . 他の統計的分析法と併用した分析
( 1 ) 2 項目相関 7 5
( 2 ) 共分散構造分析 8 6
第3 章 フレームを通してみる各国の教育の特徴・・・92
1 . 質問項目による国際比較
( 1 ) 成績と生徒の特徴 9 2
( 2 ) 生徒の成績と教師の成績 9 4
( 3 ) 教師教材 9 9
( 4 ) 学校資源 1 0 1
( 5 ) 文房具、教材 1 0 2
( 6 ) 家庭の家財 1 0 5
( 7 ) 家庭のソフト面 1 1 0
2 . 国ごとの教育の特徴
( 1 ) ケニア 1 1 2
( 2 ) タンザニア 1 1 7
( 3 ) モザンビーク 1 2 1
( 4 ) ザンジバル 1 2 8
( 5 ) マラウイ 1 3 3
3 . 成績が伸びる国とは 1 3 8
4
4 . 成績と併用できる指標の検討 1 4 2
終章 まとめと今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・147
1 . 本論文における主要な知見 1 4 7
2 . 今後の課題 1 5 4
謝辞 1 5 5
参考文献 1 5 6
表・グラフの出典 1 5 9
資料 S A C M E Q の問題サンプル 1 6 4
5
第1 章 問題意識と方法
1 . 問題意識
( 1 ) グローバル化の進展と国際学力調査
1 9 8 0 年代後半から英米を中心に導入された新自由主義政策は、米ソの
冷戦終結宣言( 8 9 年)、東西ドイツ統一( 9 0 年) とソ連崩壊( 9 1 年) な
ど東西冷戦・イデオロギー対立の終焉を経て加速し、1 9 9 0 年代以降情報
と経済のグローバル化が進展している。このグローバル化が人々の生活
に及ぼす影響は、インターネットの普及、金融国際化、貿易自由化、生
産拠点の海外移転、新興国の台頭などかつてなく大きい。モノ・カネ・
ヒトが容易に国境を越えて比較優位な方向へ流れるようになったのであ
る。国際競争にさらされた各国は人材の育成という緊急の課題に直面し、
かねてより懸案であった教育分野での課題に向き合っている。すなわち
労働力の学歴水準の向上、社会階層・地域間の教育格差解消、科学技術
の開発を担う人材の育成などが以前に増して意識されるようになり、教
育改革は各国政府の優先的政策課題の一つとなったのである( 斉藤
2 0 0 3)。
他方でこの1 9 9 0 年前後からは、コンピューターによる情報処理技術の
向上があり、各国及び国際機関が新たな学力調査の準備をさかんに行う
ようになった。1 9 9 5 年には、足並みをそろえたように、I E A – T I M S S、南
東部アフリカS A C M E Q、西アフリカP A S E C、ブラジルS A E B の初回学力調査
が実施されている。同時に国際機関では、国際学力調査の理論的裏付け
として、これからの社会で必要とされる能力についての議論が行われた。
U N E S C O は1 9 9 3 – 1 9 9 6 年に2 1 世紀の教育と学習について考えることを目
的とした「2 1 世紀教育国際委員会」を設置し、各国には共通の理想があ
ることを確認した。引き続き1 9 9 7 年- 2 0 0 3 年には、O E C D が「D e S e C o
6
( D e f i n i t i o n a n d S e l e c t i o n o f C o m p e t e n c i e s : T h e o r e t i c a l a n d
C o n c e p t u a l F o u n d a t i o n s) プロジェクト」を実施し、2 1 世紀に社会で必
要とされるキー・コンピテンシーを定義した( R y c h e n 他 2 0 0 6)。
このように世界的に国際学力調査への参加の機運が高まるに従い、
O E C D – P I S A への参加国( 地域) 数は、2 0 0 0 年、0 3 年、0 6 年、0 9 年で4 3
→ 4 1→ 5 7→ 6 7 と増加している( O C E D 2 0 0 9 )。P I S A への参加は旧ソ連・東
欧諸国の独立国の増加分もあるが、それを除いても純増しており、2 0 0 9
年には中国とシンガポールも加わる予定である。一方、国際教育到達度
評価学会( I E A)が主催するT I M S S への参加国( 地域)も、9 5 年の4 2 か
ら2 0 0 7 年には4 9 に増加し( 米国教育省 2 0 0 9)、2 0 1 1 年調査には6 0 カ
国( 地域)が参加予定である( T I M S S 2 0 0 9)。( 図1 国際学力調査への
参加国数 参照)。日本国内でも国際学力調査を意識した全国学力調査が
行われるなど、今はさながら学力調査ブームと言ってもよいかもしれな
い。
しかしながら、こうした大規模な国際学力テストに参加している国は、
国連参加国全体( 2 0 0 6 年で1 9 2 カ国) から見ればまだ一部に過ぎない。
しかも、アフリカを例に挙げるならば、参加した数カ国がその地域では
先進的な国であるにもかかわらず、P I S A での成績は「評価できないほど
低い( 馬場・内海2 0 0 8)」と言われるほど、先進国が参加する試験の尺
度とは隔たりがある。後にも述べるが、試験内容自体がカリキュラムや
生徒の経験と異なるという問題もあると指摘されている。そうした途上
国・地域で複数の国が協力し地域独自の国際学力調査が行われるように
なったことは、途上国の教育状況を明らかにする上で意義が大きいとい
えるだろう。
7
( 2 ) 途上国援助における教育の質の指標
一方で、途上国援助に目を転じると、I M F・世銀を中心とする国際援助
機関は、1 9 8 0 年代の行き過ぎた構造調整の反省から、9 0 年代には援助効
果の客観性をより重視する方向へと梶を切っている。9 6 年には
O E C D / D A C が「新開発戦略」の中で、援助効果は数値目標で測定すべきと
の方針を明示した (高橋 2 0 0 6 )。2 0 0 0 年9 月には国連で8 つのミレニア
ム開発目標が採択され、2 0 1 5 年までの達成を目指して、現在も国際機関
による公共支出レビュー、モニタリングが行われている。
教育分野では、M D G s( 国連ミレニアム開発目標)に先行して、1 9 9 0 年、
ジョムティエン( タイ) において、ユネスコ、ユニセフ、世界銀行、国
連開発計画の主催により「万人のための教育( E F A)世界会議」が開催さ
れ、初等教育の普遍化、教育の場における男女の就学差の是正等を目標
として掲げた「万人のための教育宣言」及び「基礎的な学習ニーズを満
たすための行動の枠組み」が決議された。しかしその後1 0 年を経ても「万
人のための教育」の達成には程遠い状況であることから、2 0 0 0 年4 月、
図1 国際学力調査への参加国数
PISA、TIMSS データより作成
8
ダカール( セネガル) で、ユネスコ、ユニセフ、国連開発計画、国連人
口基金及び世界銀行の主催により開催された「世界教育フォーラム」に
おいて、ジョムティエン会議後のE F A の進捗状況を把握し、今後の展開
の方向性等に関する討議が行われた。そしてその討議結果は、「ダカール
行動枠組み( D a k a r F r a m e w o r k f o r A c t i o n)」として採択され、1 . 乳幼
児のケア、2 . 基礎教育、3 . 成人教育、4 . 成人の識字、5 . ジェンダ
ー格差の解消、6 .教育の質の向上 の6 つの目標が掲げられた( 文部科
学省 2 0 0 9)。そのうち『教育の質の向上』については、U N E S C O のE F A
モニタリングレポート( 2 0 0 8)で、小学校の終了率、学習成績の不平等、
教材の不足、教師あたり生徒の人数、教師不足などの問題が取り上げら
れている。
ところが、先に述べた国連( 2 0 0 8) のM D G レポートの中では、教育の
質という項目を設けながらも、「中学校就学者の残存率」にしか言及され
ていない。他のテーマ( 紛争と難民、飢餓、失業問題、ジェンダー平等、
幼児死亡率、母親の健康、H I V / A I D S、マラリア、肺炎、A I D S 孤児、森林
破壊、絶滅動物、魚の保存、飲料水、ごみの衛生的分離、スラム対策、
最貧国への援助、貿易自由化、先進国の農産物補助金、債務免除、安価
な薬剤供給、携帯電話とインターネット、統計システムの構築など) と
並んで、読者の目を引く、わかりやすい指標だけが取り上げられている
に思われる。また、I M F ( 2 0 0 8)の H I P C( 重債務貧困国)イニシアチブと
債務免除イニシアチブ( M D R I )インプリメンテーション報告書でも、P R S P
( P o v e r t y R e d u c t i o n S t r a t e g y P a p e r , 貧困削減戦略) の進捗状況とし
てM D G の「小学校の就学率」には触れられているが、教育の質について
の言及はない。
このように、国連、I M F においては、M D G に組み込まれていない内容は、
9
たとえそれがM D G 達成のために影響され本来の目的を脅かしかねないも
のであっても、ドナー向け資料では言及されないことが多い。途上国は、
M D G や貧困削減戦略で就学率の上昇を約束している以上その実現が最優
先となることは無理からぬが、M D G の目標達成のために、その裨益され
るべき質が犠牲になっていることをアピールすることも大切である。援
助の効果をインプット質ではなく、アウトプットの質で示すことは、世
界銀行のレポートでも意識されるようになってきている( 浜野2 0 0 5)。
一方、ドナーは元々、識字と計算というまずは最低ラインの初等教育
を期待している。現状は最低限の質の確保も困難な状況ではあるが、自
国民の教育の普及と質については、そもそも途上国自身がオーナーシッ
プを持って国際社会に主張していくべき課題といえるのではないだろう
か。また、援助国の一つである日本から見たとき、途上国の教育研究に
おいては、これまでのところミクロな質的調査が不足しているといわれ
る。この事由は、問題に対する根源的な理由が解明されていないことを
意味しており、国際協力において、自立発展性に限界のある対処療法的
な援助が多いことと無関係ではない( 澤村 2 0 0 5 P . 2 8 0 – 2 8 1)。パートナ
ーとして援助の効果を確かなものにするためには、途上国の現状を途上
国自身が発信することが重要であると同時に、ドナーの視点から現状を
見ることも大切である。
以上をまとめると、途上国における国際学力調査は、先進国のように
① 「実施国が自国の教育政策に生かす」という役割に留まらず、② ドナ
ーの「援助効果のモニタリングとしての使用」、③ 実施国からドナーへの
「国際社会への主体的訴求の根拠」、さらには④ ドナーの日本人などの目
から見た被援助国の教育現状の理解ツールとしても活用され得るという、
10
多義的役割を持つものであると考えられる。
そのような意味で、S A C M E Q の学力調査のデータにおいて質的調査に
近い詳細な分析を行い、アフリカの教育の現状を明らかにすることは意
義があると思われる。
2 . 先行研究の検討
さて、1 9 6 0 年代に米国で出されたコールマンレポート以降、学力調査
で成績と共に常に注目されるのは家庭の社会経済背景( S o c i a l E c o n o m i c
S t a t u s = S E S) である。
H e y n e m a n & L o x l e y ( 1 9 8 3 )は、S I M S S の他、1 3 – 1 4 歳を対象とした2 9
カ国の科学の試験の分析から、途上国では家庭のS E S よりも学校要因の
方が成績に影響を及ぼすと論じた。なぜならば、途上国では皆が貧しい
ために、家庭のS E S の差が小さいからであるとする。B a k e r 他( 20 0 2 )は、
T I M S S のマルチレベル分析から、生徒のS E S と学校資源が学力へ及ぼす
影響は、国の発達段階によって違いはないと論じた。それは、各国政府
が教育に投資を行い、学校はある程度のレベルを持つようになったため
であり、いずれの国でも学校よりも生徒のS E S の影響の方が大きくなっ
ているとする。
アフリカの研究では、R o s s 他( 2 0 0 4)は、S A C M E Q I I のサブサハラアフ
リカ1 4 カ国のデータから、S E S をコントロールすることによって、成
績の平均と、社会経済的傾斜度( l e a r n i n g b a r )を示した。その結果、元
のデータでは平均点が高く出た国であっても、社会経済傾斜度が大きい、
すなわち生徒の社会経済背景による成績の格差が大きいという問題があ
ることを示した。斉藤( 2 0 0 8) は、アクセス、質、平等性について国別
に異なるパターンがあることを示し、その三者が満たされることの難し
11
さを述べている。
さて、このようにS E S は家庭単体の社会経済背景指標に留まらず、学
校、地域、国というマクロレベルにまで用いられている。ところが、S E S
は、マクロレベルで使用されるときには本来の目的以上の影響を付与さ
れているのではないだろうか。 つまり、S E S がG N P のような、その地域
や国の経済指標の代替にされているということである。家庭の社会経済
背景であるS E S の集合体を社会経済環境の代理指標とするには次のよう
な問題があることを指摘したい。
1 ) S E S には家庭がG N P に影響を与える貯蓄にあたる資本蓄積が含ま
れない。
2 ) 企業の資本蓄積が含まれない。
3 ) 地域や国の経済活動や政策の予算規模を表さない。
例えば、電気の普及率は、その国のG N P 水準と相関が認められるだろ
う。つまりG N P が高ければ、電気の普及率は高い。一方で、電気が普及
している国はS E S も高いだろう。なぜならば、電気が普及していれば産
業も発展しやすいだろうし、家電を含む家庭の家財道具も多いことが予
測されるからである。ところが、だからといって電気の普及率の原因を
「S E S が高ければ電気の普及率が高い」と、S E S に帰するのはおかしな話
である。なぜならば、S E S —生活水準- -はD N P に関連した様々な経済活動
の結果だからである。G N P についても「S E S が高ければG N P が高い」と言
うのは、現象を述べているのにすぎず、S E S がG N P の原因ではない。よ
って、S E S のマクロ適用はあくまで経済指標の「代理」にすぎないので
ある。
S E S と他の指標との関係については、N g u y e n 他( 2 0 0 5) が、S A C M E Q I I
12
のボツワナのデータから、共分散構造分析によって、学校立地がS E S、
学校資源と互いに関連していることを示した。また、西村( 2 0 0 7) は、
教育評価の正確性と総合性を期すには、学力調査に学校調査、家計調査
を組み合わせるべきだと主張した。しかし、N g u y e n はそれらに影響を及
ぼす大元の潜在変数については言及しておらず、西村は国際比較とマク
ロ的経済指標の活用には言及してない。国際学力調査について国の所得
や国連のL D C / L I 分類を基準に国際比較をした研究はこれまでのところ
見られない。
そこで、「一人あたりG N P( G N I)」を分析の指標にすると、次のような
ことがわかると考えられる。
1 ) 国の経済力の違いによる教育の状況
2 ) 国の経済力に相関せずに好成績を収める国があるか
3 ) 成績の違いを家庭の社会経済背景に帰すのではなく、国単位での
予算配分や政策、文化の違いに原因があるかと問う視点
以上のような観点から、本論では「一人当たりG N P( G N I)」を用いて
学力調査を分析し、国の社会経済環境が教育と学力へ及ぼす影響を示す
ことを目的の一つとする。
なお、G D P は国内総生産( 外国人が日本で得た収入を含む)、G N P は国
民総生産( 日本人が海外で得た収入を含む)、G N I は国民総所得( G N P+
海外からの利子を含む交易利益) である。G N I はG N P とほぼ同額だが、
最近の国連等の統計では「国民所得」の意味合いでG N I が用いられるこ
とが多い。時代によっても使用される用語が異なるので、当論文では、
それぞれの統計の表示に従いながら、この3 語をほぼ同義語として扱う。
13
3 . 研究方法
データは、南東部アフリカユネスコ国際教育計画研究所I I E P に依頼
し、1 9 9 5 年第1 回、2 0 0 0 年第2 回のデータアーカイブC D – R を得た。
S P S S・A M O S を用いて、まずは先行研究に従い、( 1 ) 2 変量相関で相
関の高い項目を調べ、続いて2 つの潜在変数を加えたモデルで( 2 ) 共
分散構造分析を行った。これらにより、項目間の相関の仕方は国によっ
て異なることが示された。しかし、国の社会経済の影響はモデルには構
成しきれないことから、すべての項目に「一人当たりG N I」と「成績順」
のフレームを適用し、国際比較を行った。
「一人当たりG N I」と「成績順」については、対数と正規分布図を用
いて、各国の数値の配列に論理的な裏づけがあることを示し、分析のた
めの新たなフレームを提案した。そのフレームを用いて、S A C M E Q の質問
項目を、連続変数としてではなく、できるだけ個別の変数として分析を
行った。
その上で、項目ごとに特徴のある国を抽出して記述を行い、それを国
ごとに集約することで、各国の特徴を示した。また、項目によって、「一
人当たりG N I」とどのような関係があるかを考察した。
それらの分析から数カ国を取り出し、成績に関連する要因の違いを導
き出した。
4 . 本論文の構成
本論文では、まず第1 章で国際学力調査の種類を概観すると共に、南
東部アフリカで実施されているS A C M E Q 国際学力調査について、その概要、
参加国の基礎データと経済的背景、参加国の教育状況、設問の構成、問
14
題の内容について説明する。分析時の前提となる、社会経済背景S E S の
内容と、データの重み付けについても明示する。第2 章では、分析の枠
組みとして一人当たりG N P ( G N I )のフレームを使用することについて理
論的な裏づけを述べる。そして、このフレームの利便性と、他の統計的
分析法( 2 項目相関、共分散構造分析) との併用によって教育の状況が
より詳しく理解できることを示す。さらに、その他に使用可能な指標と
して、生徒の成績を基にしたフレームと生徒のS E S を基にしたフレーム
の理論的裏づけを行い、一人当たりG N P ( G N I )フレームとの併用によって
わかることを述べる。第3 章では、この2 種類のフレームを通して
S A C M E Q 国際学力調査の質問項目による国際比較を行い、そこから抽出し
た5 カ国の特徴から、途上国で成績をよくするためには何がポイントと
なっているかを示す。終章でまとめを行う。
15
第1 章 国際学力調査とSACMEQ
1 . 国際学力調査の種類
まずは国際学力調査について概観しておこう。
規模の大きな国際学力調査には、O E C D – P I S A とI E A – T I M S S がある。
( 1 ) O E C D – P I S A( P r o g r a m f o r I n t e r n a t i o n a l S t u d e n t A s s e s s m e n t )
O E C D – P I S A はオーストラリア教育研究所を中心とした国際コンソーシ
アムが実施している国際学力調査である。読解力、数学的リテラシー、
科学的リテラシーの3 分野がある。2 0 0 0 年に最初の調査を行い、以後3
年後とのサイクルで実施。2 0 0 0 年調査には3 2 カ国( O E C D 非加盟4 )、2 0 0 3
年調査には4 1 カ国( O E C D 非加盟1 1 )、2 0 0 6 年調査には、5 7 カ国・地
域( O E C D 非加盟2 7 )が参加した( 文科省 2 0 0 7 )。2 0 0 9 年調査には、6 7
カ国(中国上海を含む非加盟国3 7)が参加する予定であり( P I S A 2 0 0 9 )、
O E C D 非加盟国の参加が増加している( 表1 「P I S A 2 0 0 0~ 2 0 0 9 O E C D 非参
加の参加国」参照)。
アフリカからは、唯一チュニジアが参加しているが、サブ・サハラ・
アフリカからの参加国はない。問題が記述式で応用問題が多いのがその
理由の一つであるとされる( S A C M E Q 2 0 0 3)。また、第9 学年( 日本では
高校1 年生)が対象のため、低所得国で進学している生徒は少数である。
( 2 ) T I M S S ( T r e n d s i n I n t e r n a t i o n a l M a t h e m a t i c s a n d S c i e n c e
S t u d y )
1 9 6 0 年創設の「交際教育到達度評価学会( I E A )」が実施している。初
等中等教育段階における児童・生徒の算数・数学及び理科の教育到達度
16
を国際的な尺度によって測定し, 各国の教育制度, カリキュラム, 指導
方法, 教師の資質, 児童・生徒の学習環境条件等の諸要因との関係を明
らかにすることを目的とする。最近では、1 9 9 5 年、1 9 9 9 年、2 0 0 3 年、
2 0 0 7 年に実施された。第4 学年、第8 学年を対象としており、学年と実
施年の間隔を4 年に合わせることで同じ学年を追跡できるように設計さ
れている。参加国は、2 0 0 3 年は4 6 カ国、2 0 0 7 年は6 0 カ国以上であり、
1 9 9 5 – 2 0 0 3 年に3 回とも参加したのは2 3 カ国である。(文部科学省 2 0 0 7)。
サブ・サハラ・アフリカでは、南アフリカが3 回、ガーナとボツワナが
2 0 0 3 年と2 0 0 7 年に2 回に参加しているが、いずれも第8 学年のみの参
加である( T I M S S)。S A C M E Q ではT I M S S の問題を一部取り入れている。
地域限定の国際学力調査には、ラテンアメリカのP R E A L、アフリカ仏語
圏のP A S E C、南東部アフリカのS A C M E Q、国際ではないが他国との協力の
下で行われている学力調査にはブラジルのS A E B などがある。
( 3 ) P a r t n e r s h i p f o r E d u c a t i o n a l R e v i t a l i z a t i o n : P R E A L
市民社会組織、P R E A L はラテンアメリカにおいて、多くの国について
教育分野の取り組みに対する成績表を発行している。この成績表の公開
は、しばしば活発な国家的議論を引き起こし、政府自身の国民に対する
実施報告の改善を後押しした( U N E S C O 2 0 0 8 )。
( 4 ) S A E B ( T h e N a t i o n a l B a s i c E d u c a t i o n E v a l u a t i o n S y s t e m )
ブラジル政府文科省が、米国のパートナーシップと支援により行って
いる学力調査である。1 9 9 0 年に機関を設立し、1 9 9 5 年より調査を行
っている。目的は、基礎教育システムの質、効率、平等性をモニターす
17
ることにより、教育の質の向上に関して、政策、プログラム、プロジェ
クトを企画するための技術的・経営的情報を提供するものである。また、
同時に、教育機関と一般社会に教育成果の概観を提供する。教科は、ポ
ルトガル語、数学、科学、歴史、地理で、その他に教授方法、教師、校
長、生徒のプロフィールを含んでいる。対象学年は、第4 、第8 、第1
1 学年で、1 9 9 5 年、9 7 年、9 9 年に調査を行った。この学力調査に基づ
いて、教育システムに行政、財政、教育的再編成が行われ、教育・学習
環境と到達度に影響を与えている( B r a z i l – M i n i s t r y o f E d u c a t i o n
2 0 0 1 )。
( 5 ) P A S E C ( P r o g r a m m e d ‘ A n a l y s e d e s S y s t e m e s E d u c a t i f s d e l a
C o n f e m e n )
仏語を公用語とする8 カ国( ブルキナ・ファソ、カメルーン、コートジ
ボアール、マダガスカル、マリ、ニジエール、セネガル、トーゴ)で1 7 , 0 0 0
人に実施。1 9 9 5 / 9 6 年と2 0 0 1 / 0 2 年に実施。第5 学年に対して、年度の
初めと終わりの2 度、読解と算数のテストを行った( C O N F E M E N 2 0 0 8 )。
地域限定の学力調査に関しては、問題や質問項目を地域に合ったもの
にするなど、より適合性の高いデザインが可能である。また、後述する
ように、調査の実施を通じて、行政の能力向上が図られている場合もあ
る( 黒田・斎藤 2 0 0 3)
18
表1 P I S A 2 0 0 0~ 2 0 0 9 O E C D 非参加の参加国
PISA ホームページhttp://nces.ed.gov/surveys/PISA/Countries .asp より作成
19
2 . S A C M E Q について
( 1 ) 概要
S A C M E Q は「S o u t h e r n a n d E a s t e r n A f r i c a C o n s o r t i u m o f M e a s u r i n g
E d u c a t i o n Q u a l i t y 」の略で、ユネスコ国際教育計画研究所の協力で南部
アフリカの国々の政策立案者が自ら企画運営を行っている学力調査で
ある。
地図1 「S A C M E Q 参加国」
( 赤い囲みは論者)
20
表2 「S A C M E Q 受験者数」
1 9 9 5 年には、S A C M E Q I の読解テストを実施。7 カ国で2 万人の生徒
が参加した。1 9 9 8 年にはS A C M E Q I I 調査プロジェクトを開始し、数学力
調査を新たに加え、2 0 0 0 年に1 4 カ国で2 , 5 0 0 の小学校、5 , 0 0 0 人の教師、
4 万人の生徒( 第六学年) が参加した。
2 0 0 5 年のS A C M E Q I I I では、科学を試験科目に加え、第9 学年に読解
力と数学のテストを行うとともに、A I D S の、教師、生徒、学業達成への
影響を調査することが計画された( S A C M E Q)。S A C M E Q I I I の結果は2 0 1 0
年に発表される予定である。
政策研究としての質の高さは、ハーバード大学を始めとする数々の大
学院における政策研究の授業で、S A C M E Q 調査報告書が参考書として採用
されているほどである( 黒田・斉藤 2 0 0 3)。
調査の結果は、ジンバブエでは貧困児童のための教科書開発プログラ
ムが開始され、ケニアでは教育・学習基準策定が実施されるなど、教育
21
改革政策へ積極的に取り入れられている。

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  • 本文由 发表于 2021年10月22日21:54:11
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